画像を観察した時の主観的な先鋭さを、客観量として数値化したものが先鋭度である。
解像力、アーキュタンス、線広がり関数、MTF(変調伝達関数)などが、具体的な計測で用いられているが、ここではMTFを使った簡易な測定方法を使う。
MTF(変調伝達関数)による先鋭度の計測は、デジタル写真においても応用出来ると思われるが、より簡単に計測するために工夫が必要である。
一般的にMTFは、正弦波的に変化する光分布をもつ入力A(u)、系からの出力A'(u)、空間周波数uとすると、次の様な式で現される。
MTF R(u)=A'(u)/A(u) - (A)
簡易なMTFの計測として、各種空間周波数の縞を撮影しそのヒストグラムの明部、暗部のピークの差を取る方法がある。つまり、次の様な式で現される。
簡易MTF R(u) = (Pl(u)-Pd(u))/255 - (B)
Pl=明部のピーク(0..255)
Pd=暗部のピーク(0..255)
u =縞の間隔(line/mm)
Photoshopによるヒストグラム
これは次のチャートと、Photoshopを使った簡易MTF計測の実際の方法である。
簡易MTF計測用のチャート(自作)
1) 14,12,10,8,6,4,2 Point間隔の縦縞を横位置で撮影する
2) カメラのPixel数に無関係に、撮影された画面の横幅を100mmと仮定(*1)
3) 14 Pointの縦縞10本分のピクセルを計り、これをDとする
4) 撮影された画像の横幅をW Pixelとする
5) よって、14 Pointの縦縞の間隔は、W/D*0.1となる
6) 12,10,8,6,4,2 Pointの間隔は、これの7/6,7/5,7/4,7/3,7/2,7/1倍である
例えば W=640,D=117とすると、計測する空間周波数
u=0.55,0.64,0.77,0.96,1.28,1.91,3.83 となる(*2)
7) 1)で撮影された画像をPhotoshopで読み込む
8) それぞれの縦縞の部分を選択し、輝度のヒストグラムを取る
9) ヒストグラムから、Pl=明部のピーク、Pd=暗部のピークを読み取り
式(B)から R(u)を計算する
10) 6の縦縞の間隔を横軸に、8)のR(u)を縦軸にグラフ化する
(*1) これは、幅640Pixelの画像を150dpi、または幅1280Pixelの画像を300dpiで印刷された幅が108.5mmになる事から決めた。ほぼ、サービスサイズのプリントの長辺と同じである。ここでの仮定は、一つの実験的基準としての意味があるだけである。
(*2) ここは、表計算ソフトで式を使っておけば便利
MTF曲線を使って精鋭度を評価する方法として、MTF曲線が囲む面積を使うなどの方法がある。
ただし、精鋭な画像ほど高い主観評価が得られるかというと、そうでは無い。
MTF 0.5 を示す空間周波数において、肖像写真では2-3 line/mm,風景写真において4-5
line/mmであったという研究がある(*1)。
(*1) H.Frieser and K.Biedermann Photogr.Sci.Eng.,7,p.p.28-